■離婚とは
夫婦の生存中における当事者の意思に基づく婚姻の解消です。
■離婚の効果
1.離婚により,夫婦(配偶者)ではなくなるので,元の配偶者の相続権はありません。
2.結婚により姓を変えた者は,離婚によって結婚前の旧姓に戻ります(離婚の日より3ヶ月以内に届出をすれば,離婚の際に称していた氏を称することができます)。
■離婚の種類
1.協議離婚とは,当事者の意思による婚姻の解消であって,夫婦がその協議で離婚することをいいます。
・協議離婚は,裁判離婚のような決められた理由がないと離婚できないというものではありません。
離婚について夫婦が合意すれば,特に理由がなくても離婚できます。
離婚の約90%が協議離婚です。
残りの10%は,②の調停離婚99%,③裁判離婚が1%となっています。
2.調停離婚とは,家庭裁判所の調停により成立する離婚です。
・相手方に,協議離婚に応じてもらえない場合には,すぐに離婚の裁判をするのではなく,家庭裁判所に離婚調停の申立を行う必要があります。
<申立に必要な費用(札幌家庭裁判所の場合)>
収入印紙1,200円
郵便切手798円分
<申立に必要な書類(同)>
申立書1通
夫婦の戸籍謄本1通
・6か月以内で8割ぐらいが解決していると言われています。
3.裁判離婚とは,離婚の訴えによる離婚です。
離婚判決を得るには,民法上の離婚原因が必要です。
調停と異なり,離婚の判決が下ると強制的に離婚が成立することになります。
■離婚における問題点
以後は協議離婚について考えることにします。
1.婚姻費用
夫婦は婚姻から生ずる費用を分担する。
婚姻から生ずる費用とは,共同生活の費用,子女の保育・教育の費用,医療費など一切を含む。
分担額を支出しない者に対しては,相手方は,婚姻中でも,離婚後でも,家庭裁判所に分担の調 停・審判を求めることができる。
2.財産分与
結婚中に夫婦が共同で形成した共有財産を清算することです。
たとえ名義が夫(妻)のものになっていても,妻(夫)の協力があってのものであると考えられるので,原則として,名義にかかわらず,財産分与の対象となります。
<税金>
財産分与を受ける側:財産分与額が過大でなければ,贈与税はかからないと言えます。
3.慰謝料
精神的・肉体的な苦痛という損害に対する賠償のことをいいます。
離婚の原因について責任のある方が慰謝料を相手に支払うことになります。
<相場>
配偶者の所得や離婚に至った事情にもよりますが,100~300万円の間が最も多いようです。
なお,たとえば夫が浮気をしたことが原因で離婚になった場合には,夫に対して慰謝料を請求できることはもちろん,浮気相手(女性)に慰謝料を請求することもできます。
4.子の養育費
未成熟の子が社会人として独立するまでにかかる生活費,教育費などをいいます。
成人するまでとするのが一般的ですが,大学卒業までとしても結構です。
なお,どちらが親権者かということにかかわりなく,子の養育費は両親双方が負担します。
5.子の親権
子がいる場合には,親権者(法定代理人)を決めます(親権者は離婚届の記入事項です)。
6.面接交渉の日程
親として子供に会いたいという感情を保護している権利です。
■離婚協議書
離婚における問題は,離婚をすることを優先して,離婚後のことをよく協議していないこと,あるいは,協議したものの書面にしていなかったことにあります。
第1に,離婚届を提出した後に,改めて離婚後のことを協議することには,困難が伴います。
たとえば,実際に養育費を受け取っているのは,女性で約30%程度の人しかいません。
協議離婚の時に取り決めをしていれば,約70%の女性が養育費を受け取れるというデータがありますので,いかに離婚前の協議をしっかりしておくかがポイントです。
第2に,離婚前に口頭での約束があったとしても,夫婦としての信頼関係を維持・継続することができないから離婚することに踏み切った相手方が,きちんと「口約束」を守るでしょうか?
「離婚前」に「離婚協議書」を作成しておくことが必要です。
なお,離婚協議書に包括的清算条項を定めると,離婚に伴う財産的な問題は存在しないことをお互いに確認したことになり,離婚協議書に明示した以外の請求は,以後できないことになります。
■公正証書による離婚協議書
1.離婚協議書は作ったものの,時間が経過するにつれて,養育費などの支払が止まってしまうというトラブルが非常に多くなってきています。
そこで,離婚協議書は、裁判の判決と同じ効力がある公正証書にする方が,確実・安全です(養育費の支払は,長いものでは15年以上にもなります)。
2.公正証書には,養育費などの金銭の支払についての取り決めが守られない場合には,裁判を起こさなくても強制的に取り決め事項を守らせる強制執行力があります。
強制力を実現させるために,公正証書には「約束が実行されない時には直ちに強制執行を受けるものとします。」という強制執行認諾文言を入れます。
3.公正証書にしたいけれど,相手方が公証役場に出頭してくれない場合には,行政書士が代理人として公正証書を作成することができます(代理人を立てることもできます)。
4.公正証書作成の手数料等は,公証人手数料令により,次のように定められています。
養育費と財産分与(慰謝料等)とは,手数料の計算を別々に行なって,合算します。
目的の価額 | 手 数 料 |
100万円まで | 5,000円 |
200万円まで | 7,000円 |
500万円まで | 11,000円 |
1,000万円まで | 17,000円 |
3,000万円まで | 23,000円 |
5,000万円まで | 29,000円 |
1億円まで | 43,000円 |
3億円まで、5,000万円ごとに13,000円加算 | |
10億円まで、5,000万円ごとに11,000円加算 | |
10億円超は、5,000万円ごとに 8,000円加算 |
・送達の費用は,1件1,400円です(交付送達は1,650円)。
「送達」というのは,強制執行するための前提として必要な手続きで,公正証書を作成する際,債務者
本人が公証役場に出頭して作成するときには,公証人が公正証書謄本を債務者に手渡しすることによって送達を終えることができ,これを交付送達といいます。
交付送達ができる場合には,その手続きをしておかれることをおすすめします。
■年金の離婚分割
改正前の年金制度の下で女性が離婚した場合には,年金受給年齢に達すると,第1号被保険者(夫が自営業や農業等の従事者の場合)は国民年金の基礎年金が,第2号被保険者(民間会社または公務員として勤務している場合)は自分の厚生年金や共済年金と基礎年金とがもらえたのに,第3号被保険者(夫が第2号被保険者である場合のその妻)には国民年金の基礎年金しかもらえませんでした。
しかし,夫が第2号被保険者である場合の夫の厚生年金の保険料は,妻の家事という協力により支払われたものであるところ,夫は厚生年金と基礎年金とをもらえるのに,専業主婦である妻は基礎年金のみでは,不公平でした。
そこで,
1.平成19年4月以降に離婚した場合
夫婦間の合意または裁判所の決定があれば,妻は夫婦であった期間に対応する夫の厚生年金の1/2を上限に,自分名義の年金として受け取れることになりました。
・社会保険事務所から直接に妻に支払われる。
・離婚後に夫が死亡しても,妻に分割された年金が支給される。
2.平成20年4月以降の加入期間
離婚の有無にかかわらず,妻が専業主婦となった期間は,夫の厚生年金の1/2を,夫との合意なしに,自動的に受け取れることになりました。